小山薫堂 幸せの仕事術―つまらない日常を特別な記念日に変える発想法
- 2014/08/28 17:40
- カテゴリー:読書感想
かなり有名な放送作家らしいけど、私は存じ上げなかった。
たまたま見た「情熱大陸」で小山薫堂(こやまくんどう)さんを知った。
ただ、この番組は珍しく超駄作だと私は思った。
放送作家の本業だけではなく、映画「おくりびと」の脚本から、くまもんの生みの親、金谷ホテルのアドバイザーなど、マルチの才能を発揮されている方ということは、最初の五分くらいの説明で知ったのだが、
小山氏は、50歳の誕生日を記念して、超多忙なのにも関わらず、1ヶ月の休暇を取る・・・という事で、なぜか後半は、休暇中の小山さんの日常に密着していた。
いやいや、、小山さんは業界では有名かも知れないけど、どのような仕事をしている人かを 知りたいのであって、休暇中の小山氏を テレビ放映する必要あります??
マルチな才能がある。とはいっても、視聴者のほとんどは詳しくは知らない訳です。
その仕事ぶりを、掘り下げて、人物のインタビューなどで 考え方を放映するだけで良かったんじゃないでしょうか。
その仕事に関するエピソードはなくて、いきなり休暇中を密着されても、誰が興味あるんでしょうか・・・。
しかし、私は逆に情報が少なすぎて、小山薫堂さんが どんな考え方をされているかが少し気になって、著書を読んでみました。
ところが、著書を読んだら、とても面白かったんです。
「ところが」と書いたのには、色々訳がありまして、基本的に 私は広告マンとか、企画マンを嫌っているというか、あんまり好きな人種とは思っていません。
それは、企画が大好きな上司に仕えた事があって、ものすごく「出来る人」ではあるんですが、企画に「タテマエ」と「本音」がいつもあって、
外部の人間が説明を受けると、「とても魅力的」なのですが、
内部の人間からすると、「うさんくさい」話が多かったんです。
要するに、理想的なアイデアをぶち上げるんですけど、決して実現することはない・・・みたいな。
情熱大陸での、小山さんの言動で、なんかその上司に似ている理想主義な考え方(企画の方特有?)を垣間見ただけで、正直 私は この人を何か好きになれない部分があるなーと思いながら 本を読み始めたのです。
しかし、期待は良い方に裏切られました。
理想主義的なアイデアではなく、現実的な枠組みの中で、企画によってどのように生まれ変わるかが良くまとめられていました。
特に私は 金谷ホテルでの従業員の名刺の企画なんかは、とっても良いアイデアだと関心しました。
それはこうです。
金谷ホテルで従業員自身がお勧めする場所を選んでもらって、30場面ほどホテルの写真を撮ります。
そして従業員は、自分がお勧めする場所の写真を、自分の名刺に印刷するんです。
そして、お客様の見える場所に貼り紙をします
「従業員が持っている名刺には、従業員がそれぞれお勧めできる場所の写真があります。是非、従業員に名刺をもらって、オリジナルのカタログを造りましょう」
すると、子供が面白がって 従業員に話しかける・・すると親と従業員もコミュニケーションができる。
さらには横の繋がり・・従業員も、「あの従業員の名刺には面白い写真があるから」と子供に声をかけたりするようになり、どの従業員が、どの写真を持っているか、、を知る事になり、従業員どうしのコミュニケーションも生まれました。
名刺の裏に写真を印刷しただけなのに、それを意味付けしただけで、コミュニケーションが生まれていく。
大抵の私が見てきた企画は、企画者や従業員が「努力する事が必要」な企画だと思うんです。
でも、部外者が企画だけ持ち込む場合は、結局は実行者である従業員に上乗せの労力が必要になるので、乗り気でなくなり、中途半端な結果に終わってしまうことが多いと思います。
ただ、この名刺の企画は、お客様から従業員に声がかけられるように考えられている。
そうすれば、自然と従業員も嬉しくなり、乗り気になるだろう。
そこまで、計算づくで企画するってのは並大抵ではないと思います。
この視点の変化は、本当に私は 勉強になりました。
著者は、ケチや、もったいない、貧乏性と自分の事を評されていますが、最少の投資で最大の効果を狙うを企画で実行されているのがスバラシイです。
私も常々、今の日本には ハードよりソフトが大事だと思っていますが、
こういう企画を練るという事は普段意識していませんでした。
著者が言うように、本来 企画はサービスと同義語で思いやりから生まれるもの。
この事を忘れないようにして、私も日常から企画を考えたいと思います。