早期教育の弊害の論理を知るに最適<ミスエデュケーション―子どもをむしばむ早期教育 1
子育てに関わる全員がまず読むべきと私は思う良書。
特に早期教育に興味を持った人は、早期教育の理論を相対化する為にも是非この本を読んでから、早期教育を始めるかを決断して欲しい。
私も、早期教育に興味を持った時、早期教育の弊害も調べてみようとしたが、色々な専門家が「早期教育には弊害がある」とは言っているが、論理がないので納得が出来なかった。
むしろ、早期教育の業者がよく言う「3才までで、脳のすべてが決まる」や「能力開発」「IQを上げる」という論理のほうが正しいように思えた。「教育は早ければ早いほうが良い」という大人の論理を幼児教育に、当てはめていたのにも自分で気付いてなかった。
この本のすごいところは、「早期教育の弊害」を論理的に、データ的に説明してくれている所だ。30年くらいのデータを取って検証しているのである。
そして、全否定ではなく、本当の早期教育とはどのようなものか・・まで言及している。
私自身、弊害いっても大した事にはならないだろう・・と軽く考えていた親である。しかし、現在は、早期教育には、取り返しの付かない弊害があると思っている。詳しくは本を読んで頂くしかないが、他の人の参考になるように要約を感想に記載しておく。
それと、この本には、ドーマンのフラッシュについても記載がある。幼児教育は30年も前から存在していたということがわかるが、なぜ早期教育の業者は30年も前から存在しているのに、現在の偉大な成功モデルを示さないのか?3才までが勝負を、親を急がせるのか?
そういった事にも、疑問が湧いて来る事だろう。
さて、かなり長い前置きになった。
まず1991年発売(本国では1899円)の本だが、25年たった現在(2015年)でも全く内容が色褪せていないのに驚く。
作者は この本を出す時点で25年余り 幼児教育に携わり、色々なサンプル(親子の教育)を観てきた経験を本を書いている。
その経験上で色々な親のタイプを列挙しているのだが、
「子供に自分を投影するタイプ」「オリンピックを目指す親」「子供に高価な服を着せて、ステータスを得る親」「子供の成功を自分の手柄にする親」などなど。
まさに、現代と親と全く変わらないではないか。
結局は、親が子供に対して、色々な事を願う内容は、25年前と現在と何も変わらないということか。
それなら、その親子をロールモデルとして、その何年後かにどういう風に育つか・・・ということも、25年前と現代でも 大差ないということになり、貴重な子育てのロールモデルとなることは間違いないと思われる。
もう1つ、この本が優れていると思う点は、幼児教育の歴史的な経緯も書かれているのだが、その教育が取り入れられた時代背景も並行して記載されている事である。
それにより、発売から25年も経った後の現代に読んでも、歴史を振り返る事が出来、当時の時代背景を知らなくても、どのような経緯で幼児教育が考えられてきたのかも、時代背景とともに知る事ができる。
その中で驚いたのは、当時は 3才から4才までのナーサリー(幼稚園)だって、早期教育の一部と考えられている事だ。
そして、5才以下の子供に系統的な教育をした場合、良い事だけではなく、弊害が起こりうると著者は経験から考えているのだが、そのメカニズムについての説明解釈が、今までの疑問をすべて払拭できたくらい、論理的な説明がなされていた。
この点について、要約してみる。
まず、幼児期と6才以上の子供では、脳の働きが全然違う。
系統的な学習を理解できる脳は5才~6才以上。
まだ脳が系統的な学習を受け入れない段階で、系統的な学習をさせてしまうと、脳が消化不良を起こしてしまう。それどころか、系統的な学習を受け入れる段階に進化することを妨げてしまい、脳の発達を遅らせてしまう。
データ的な証明としては、3~4才の脳が準備できていない段階で、系統的な学習を始めた子供達のグループと、5才の系統的な学習を受け入れる年齢に始めた子供達が、8才になった時点での理解力を比較すると、3、4才から初めたグループのほうが、5才から始めたグループより理解力はあきらかに劣っていた。
もう1つのデータとして著者が挙げているのは、現在でも教育の先進国のデンマークは、小学校2年(7才)からしか、文字の読み書きは教えない。
一方、フランスは デンマークより2年早い、5才から文字の読み書きを教えている。
しかし、識字率100%は2年遅れで読み書きを教えるデンマークのほうで、フランスは3%ほど識字できない率が存在する。
(本でも説明があったが、日本語ではこのような事は起こりにくいそう。一文字に対して一語しか発音がないので、語彙数の多さはともかくとして、文字と発話は、一対一でリンクしている。一方、フランス、デンマーク語などは、アルファベットの並び方や子音がつくかどうかで読み方が変わる言葉で、文字が書けない人が一定数存在するそうです)
このように、早期教育の弊害とは、脳の発達段階を無視するため、そのときに発達するべき部分を、発達しなくしてしまう事たと著者は言う。
そして、その弊害は12才くらいになってからしか、出てこないということだ。